でっきぶらし(News Paper)

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165号(2005年05月)5ページ

病院だより  とある日の見回り風景

私たちは、毎日各飼育担当者と一緒に園内の動物たちの様子をチェックして、健康管理に努めています。
動物園に来ると、たまにかごを持ってブラブラ歩いている人(獣医)を見かけることがあるかもしれません。

飼育係の人たちが一生懸命獣舎の掃除や動物の餌作りをしている時に、何も仕事をしないで動物を眺めているように見えるかもしれませんが、ぼーっと動物を見ているというのではありません。

頭の中では「今日も元気かな、顔つきや動きはどうかな、あの治療はああしたらいいかな、こうしたらどうかな・・・」などといつも考えながら見回りをしているのです。

さて、動物たちを見ていると、普段の何気ない様子の中でもとても興味深い行動や表情が見られることがあります。最近話題になったレッサーパンダの風太くんもそうでしたね。

というわけで今回は、皆さんと一緒に紙面上ですが園内を見回りしてみたいと思います。動物園内でどこにどの動物がいるか、イメージしながら読んでみてくださいね。

中型サル舎に引っ越してきたクモザルのホープくん(詳しくは「あらかると」をご覧ください)は、朝のぞくと前に走ってきて「ぼくここにいるよ!」という感じで身体を大きく見せて挨拶してくれます。

この行動、スタッフ以外にはしません。作業着で判断しているのだろうと思うのですが、実はメガネまで認識しているということがある日判明しました。

ホープくんは時々、夕方エサを用意してあるのに部屋に入ってきてくれないことがあります。代番(担当者が休みの日に代わりに担当する飼育係)のSさんの日にその傾向があり、なんでだろうと首を傾げていたところ、Sさんがひらめきました。「俺がメガネをかけているからだよ!」。

ホープくんをクモザルの島から中型サル舎へ移動する際、麻酔をかけたのですが、吹き矢を打ったU獣医もメガネをかけていたので、メガネをかけた係を見ると、また何かされるかもと思ってしまうのではないかということでした。

SさんはU獣医が部屋を覗いたときにホープくんがキーキー興奮したのでもしやと思い、試しにメガネを外してみたらうまく部屋に入ったそうです。

でもこの方法、何回かやっているうちに効かなくなってきたので・・・苦労が耐えないSさんなのですが(ご苦労さまです)。

チンパンジー舎では、子供たちが元気に遊んでい ます。先日、中国雑伎団来日?と思えるアクロバットを見ました。お姉さん格のリズが、一番小さなれんげちゃんを足にぶらさげながら、天井をうんていしながらすいすい移動していました。

れんげちゃんも片手でリズの足首をつかんでぶらんぶらんと平気な顔。足腰や握力の強さを実感した行動でした。

ゾウ舎に行くと、入り口側の部屋にいるシャンティが鼻を伸ばして誰が来たかを確認してくれます。たまに器用に柵の間の狭い隙間に鼻を入れて、柵をパクっとくわえておどけてみたり。

でも、時々その後ろにいるダンボが早く外に行きたーいとアピールして扉をドンドンと叩くので、獣舎に響いて迫力と怖さを感じることもしばしばです。

野生のヒツジであるバーバリーシープは、獣医が来ると逃げます(笑)。

私は動物園に勤めて2年ですが、その間彼らに治療も含め何も嫌なことをしてないのに・・・。いつも持ち歩いている診療カゴが目印になるのでしょうか、試しにカゴを置いてから近づいてみても逃げることがしばしば。

気配が違うのでしょうね。飼育係をしているベテラン獣医のYさんは、「カゴを持って歩かなくなったら、バーバリーが逃げなくなった!」と喜んでいましたが。

ところで、そんなバーバリーシープのおもしろい様子をある日見ました。園内の清掃係のIさんが、葉っぱやゴミを横にとばす空気の出る機械を使いながらバーバリーシープ舎の横の通路をきれいにしてくれていた時のこと。

その空気が当たったのでしょうか、機械音にびっくりしたのでしょうか、座っていたバーバリーシープが一斉に立ち上がりました。

で、どうするのかと思ったら、1カ所に集まりました。群れで生活する草食動物らしいですね。そして、その中から2頭が出てきたのです。そのうちの1頭が、掃除している方に向かって何回か角を振りました。

が、もう1頭は一足先に遠くへ逃げていきました。飼育担当のIさんに聞くと、柵の中に入ってきた葉っぱはむしゃむしゃ食べちゃうそうです。でも、普段は落ちている葉っぱはあげないでね。

さて、その向かいにいるアクシスジカのメグちゃんは、生まれてすぐ衰弱してしまったため飼育係がミルクをあげて育てました。

このため、飼育係のAさんとIさんが大好きです。掃除をしに獣舎内に入ると、メグちゃんはAさんたちの側から離れません。いいなあ、動物に好かれて(独り言)。

先日子供が産まれたコモンマーモセットは、小さなサルの仲間です。この仲間のサルは、家族で子育てをする習性があります。

2月に生まれたモモちゃんも、なんと子育てに参加。小さな赤ちゃんをモモちゃんがおんぶしている姿をこのところよく見ることができます。「子育てお勉強中」といったところでしょう。

今回は紙面の都合上ここまで。2〜3分でも長く動物を見てみると、いろいろな様子が見られて動物たちへの興味や親近感が増してくること間違いなしです!

そして、何の仲間なのかな、どんな身体をしているのかな、どこに住んでいるのかな、などイメージを膨らませてみましょう。

是非、動物達のいろいろな生活を観察してみてください。世界各国の172種類の動物たちが皆さんを待っています♪

(野村 愛)

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