でっきぶらし(News Paper)

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267号(2022年08月)9ページ

「バナナの出園」

皆さんはサイチョウという鳥を知っていますか?嘴(くちばし)の上にカスクという角のようなものがあるとてもインパクトのある見た目の鳥です。このカスクがサイの角に似ていることからサイチョウという名前になりました。

7月4日、当園の熱帯鳥類館で長らく飼育していたオスのサイチョウ「バナナ」が埼玉県こども動物自然公園に出園しました。今回は出園することになった経緯について書きたいと思います。

バナナは1989年に来園し、日本で初めて繁殖に成功して繁殖賞も受賞したまさにレジェンド!2代目のペアのメスが亡くなって以降、現在も当園で飼育しているメスの「ナナミ」と同居し、繁殖を目指していました。しかしこのナナミさん、サイチョウよりも人間の男性が好きな変わり者…。バナナは餌を嘴でつまんでプレゼントするプレゼンティングという求愛方法で、必死にナナミにアピールしていましたが、ナナミの反応はイマイチ…。一方ナナミは当時の担当者だった男性飼育員にプレゼンティングして、種を越えた三角関係にまで発展。そんな微妙な関係が続いていました。

しかし一昨年、そんな微妙な関係が悪化してしまいました。ナナミに振り向いてもらえないストレスからか、バナナがナナミに攻撃。ナナミはケガの治療のため動物病院に入院し、そのまま別居となりました。

現在日本の動物園で飼育しているサイチョウは年々減っていて、飼育している動物園は当園を入れてわずか3園のみ。更にオスはバナナを含めて2羽のみ。繁殖経験のある子育て熱心なバナナはとても貴重な存在です。ということで、去年ラストチャンスでもう一度バナナとナナミのお見合い、同居をすることになりました。結果はというと…、残念ながら上手くいきませんでした。約1年ぶりの再会でしたがお互いに相手のことや、ケンカ別れしたこともしっかり覚えていて、改めてサイチョウの頭の良さを再認識しました。このまま同居しても関係は良くなりそうもなく、お互いにストレスになるだけだったので、このペアでの繁殖は断念しました。しかし、先程も説明した通り、サイチョウの飼育数は減っていて、このままでは近い将来日本の動物園でサイチョウが見られなくなってしまいます。そのため、バナナがメスを複数羽飼育している埼玉県こども自然公園に繁殖のため出園することになりました。熱帯鳥類館の人気者の出園にちょっぴり寂しい気持ちもありますが、新しいメスとの出会いがいい結果に繋がってくれればと思います。 

サイチョウという魅力いっぱいの鳥をこれから先も日本の動物園で見られることを願っています。バナナ元気でね~!!
       
(堀 友香)

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