飼育日誌

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【ブログ】オランウータン「ジュリー」日記⑦

オランウータン「ジュリー」日記⑦

ジュリーはメスの「ミンピー」との繁殖相手として当園にやってきましたが、オランウータンにも人間と同じで相性というものがあります。
オランウータンは力がとても強く、さらにオスの体はメスの2倍以上の大きさなので、闘争になると大怪我を負ってしまうかもしれません。そのため同居する前に檻越しに"お見合い"をして、お互いに敵意がないことを念入りに確認する必要があります。
とくにジュリーは人工保育で育ち、ほかのオランウータンと一緒に過ごした経験がありません。ミンピーのことを同じオランウータンだと思ってくれるか(もしくは自分が人間だと思っているかも?)、少し…いえ、かなり不安なところです。

ジュリーの検疫が終わり、部屋の移動にも慣れてきたところで、まずはミンピーをジュリーの向かいの部屋に移動させました。向かいどうしの部屋は、お互いの姿は見えますが飼育員用の通路を挟んでいるので、触れることはできません。
ジュリーが来園した時から、音や匂い、飼育員の作業などでジュリーの存在には気づいていたミンピー。興味津々でジュリーが見える場所に張り付いていました。しかしジュリーの方は「誰かいるなぁ」と軽く見に行く程度で、その後はいつものハンモックへ戻り食事を始めました。前の動物園でも、触れられない場所に他のオランウータンがいる状況には慣れていたそうです。お互いに明らかな敵意が見られなかっただけでも良しということで、この状態をしばらく続けました。

向かいの部屋で過ごすこと数週間、お互い時々様子を見てはいるものの、ジュリーはミンピーにあまり関心がないようでした。そこで今度は、格子越しに触れることができる、隣同士の部屋でお見合いをしてみることにしました。
まず新しい部屋に慣れていないジュリーを部屋に入れて、部屋の探索をして慣れてきた頃、隣の部屋にミンピーを入れました。ミンピーは色んなオランウータンと同居経験がありコミュニケーション上手なので、すぐにジュリーの見える格子の方へ近づいて行きました。ですがジュリーはこの距離でオランウータンに会うのはおそらく初めて。驚いたのか、格子めがけて威嚇しまくり、ミンピーが少しでも格子から手を出そうとすると、格子を叩いたり頭突きしたり…明らかに怒っている様子でした。さすがのミンピーもこれにはショックを受けたようで、飼育員に助けを求めにくる始末…この状態で長時間続けても2頭の関係は良くならないだろうと思い、初めてのお見合いは15分で終了しました。

1週間後、2回目のお見合いをしようとしました。今度は前回少し怖がっていたミンピーを先に部屋に入れて安心させようと思ったのですが、扉を開けても部屋をのぞき込むだけで、ミンピーは部屋に入りたがりません。ジュリーに威嚇されたことがトラウマになっているのかもしれませんでした。
そこでこの日のお見合いは諦め、ミンピーに安心して部屋に入ってもらえるよう、ミンピーの部屋もジュリーがいた部屋も含めて自由に行き来できる時間を作りました。
最初は部屋をのぞくだけだったミンピーも、しばらくするとそれぞれの部屋に出入りして部屋の隅々までチェックし、隠してあったおやつも見つけて自分の部屋のハンモックで遊ぶくらいには安心してくれたようでした。
さらに1週間後、2回目のお見合いのリベンジをすることができました。1回目に比べるとジュリーも落ち着いた様子で、ミンピーが手を出しすぎなければ激しい威嚇はほとんどありませんでした。ただ、どう関わっていいものか困惑しているようで、10分もすると2頭とも帰りたくなっている様子。今回もお見合いは15分で終了しました。

翌週、今度はジュリーもお見合いの部屋に行きたくないようで、通路をうろうろ。結局部屋には入ってくれたのですが、このままジュリーがこの部屋を嫌いになってしまうと困ります。実はこの部屋は、今後ジュリーの寝室になる予定の部屋なのです…(今は検疫をしていた仮の寝室で過ごしています)。
ということで、現在部屋にジュリーの大好きなハンモックを追加して、遊び道具なども入れて、お部屋改造計画を実行中です。

2頭が仲良くなれるまでまだまだ長い道のりになりそうですが、温かく見守っていただければと思います。

写真1:格子越しにミンピーを警戒するジュリー
写真2:新しいハンモック

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