2023.03.14
【ブログ】レッサーパンダの肉球について
レッサーパンダの和(カズ)が足裏(あしうら)をゆっくり観察させてくれました。
めずらしいことです。
せっかくなので、レッサーパンダの肉球についてお話します。
そもそも肉球とは、歩く時の衝撃をやわらげるクッションの役割を果たしている
角化した(かたくがんじょうになった)皮膚です。
その中には弾力を保つ脂肪組織も入っています。
肉球が最も発達しているのは蹠行動物(しょこうどうぶつ)とよばれる、
てのひらやかかとを地面につけて歩く動物たちです。
肉球がはっきり見えているホッキョクグマの前肢(まえあし)の写真がこちらです。
指球(しきゅう)と呼ばれる指の下についている肉球と
掌球(しょうきゅう)と呼ばれる手のひらの部分の肉球、
そして手根球(しゅこんきゅう)と呼ばれる肉球があります(*1)。
肉球の位置は人の手で説明するとこの辺りに付いていると思われます。
そして、動画のとおりレッサーパンダの前肢の裏はこちらです。
見えるのは全て毛です。
レッサーパンダは高山で生活する生き物なので、
雪の上でもすごしやすいよう足裏までびっしりと毛で覆われています。
この毛は保温と滑り止めの役割があると考えられています。
さらに、この毛はクッションの役割も果たします。
そして、足裏の毛をかきわけ肉球をカメラに収めようとしたのがこちらの写真です。
レッサーパンダの肉球はほとんど退化してしまっていて、
イヌネコのようなプニプニとした肉球はありません。
写っている指球(しきゅう)もとても小さく、クッションの役割は果たせていないと思われます。
掌球(しょうきゅう)もあるようなのですが、毛に阻まれて目視は困難でした。
触ってみると少し分厚い、たるみかけた皮膚があるような感じですが、
とても分かりづらく本当に掌球なのか不安になります。
文献によると手根球の名残もあるようなのですが(*2)、さっぱり分かりませんでした。
***
いまはもう必要としなくなったため退化している肉球ではありますが、
レッサーパンダは竹を食べる動物なのに食肉目(お肉を食べる動物のグループ)であることや、
ご先祖様は足裏に毛がなくとも生活できる場所で生きていたことを
私たちに教えてくれる貴重な痕跡です。
参考
*1 K.M.ダイス. 山内昭二. 獣医解剖学 第二版. 近代出版(東京), 1998, 764p.,
*2 R.I, Pocock,. THE EXTERNAL CHARACTERS OF THE PROCYONIDE. Proceedings of the Zoological Society of London. 1921, p. 389-422.