でっきぶらし(News Paper)

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26号(1982年03月)2ページ

哺乳動物繁殖ベスト10

立春も過ぎて、梅の花が咲きほころぶ此の頃、ようやく春の兆しが感じられるようになりました。この新聞が、それぞれの仲間達の手に行き渡る頃には、桜のつぼみも大きくふくらんで、南の方からは、春一番の便りが届く頃でしょうか。
さて、1号での動物達の1日の飼料費ベスト(ワースト)10に続いて、今回は、過去12年半の間に飼育された、哺乳動物の繁殖状況(死産・出産後の死亡も含む)を調べ、そのベスト10を組んでみました。
現在までに飼育された哺乳類は、9目121種。内繁殖可能であった種は、76種で、一応成功(6ヶ月以上生存)したものは43種で、流産・死産まで含めますと55種に及びました。(昭和56年12月31日現在)

結果はいかに、どんな動物達が顔を出してくれるでしょうか!

<日本平動物園繁殖ベスト10>
(総数) (成長数)
第1位 バーバリシープ 72頭 46頭
第2位 リスザル 38 18
第3位 ミーアキャット 37 13
第4位 ホンシュウシカ 34 30
第5位 ベンガルトラ 30 29
第6位 ヤクシカ 21 14
第7位 ヌートリア 20 13
第8位 クロクビタマリン 16 8
第9位 ヒョウ 16 5
第10位 ライオン 15 13
次点 ワタボウシパンシェ 15 9

第12位 クロヒョウ 13 6
第13位 アメリカバイソン 12 11
第14位 カリフォルニアアシカ 12 3
第15位 ピューマ 10 5
第16位 タヌキ 9 6
第17位 マントヒヒ 7 6
第18位 ハイイロキツネザル 7 5
第19位 ダイアナモンキー 6 4
第20位 キリン 5 5

[第1位 バーバリシープ 72頭(46頭)]
第1位は何といってもバーバリシープでした。ボスはもう4代目、4頭の雌を従えての繁殖力は抜群、すでに72頭に達し、2位を大きく引き離し、これからもどんどん出産する勢いです。さすがに、ネズミならぬバーバリシープの仔だくさんで、首位の座は揺ぐことはないでしょう。

[第2位 リスザル 38頭(18頭)]
意外や意外、38頭で子供動物園で飼育されているリスザルが、1位のバーバリシープに続いて2位にランクされています。成功率(18頭)が低いためにあまり目立ちませんでしたが、何といっても群れで飼育されている繁殖力、3位のミーアキャットが「ビタッ」と繁殖が止まっているだけに、これからは、4位のホンシュウシカと2位の座を争うことになりそうです。

[第3位 ミーアキャット 37頭(13頭)]
これも、子供動物園で飼育されている動物。ミーアキャットは、昭和48年から飼育され50年にやっと1回目の出産を見ると、その後成功率は悪いものの、順調過ぎる程にどんどん出産。そこまではよかったのですが、増えすぎて放出する時、間違えて1番よく出産した雌まで放出してしまい、以来繁殖は完全にストップ。このままでは、近々ホンシュウシカに3位の座を奪われることでしょう。

[第4位 ホンシュウシカ 34頭(30頭)]
やっと顔を出してくれました。春先には、いつも仔の顔をみることができ、さぞや沢山とおもいきや・・・・。からくりは、成功率9割の高さにあります。出産総数は4位に甘んじているものの、成長した仔の数では堂々2位に入っています。

[第5位 ベンガルトラ 30頭(29頭)]
これもやっと顔を出してくれたといっていいでしょう。1位ではないかの声が聞こえてきそうですが、そのランク付けは、個体別の方をお楽しみに・・・。
10年連続30頭出産、29頭の成長は何といっても立派、何処まで伸びるのか楽しみだったのですが、雄の突然の事故死が悔やまれます。

[第6位 ヤクシカ 21頭(14頭)]
ホンシュウシカとは同種ですが、ここでは別枠で扱いました。
開園して以来、10年の飼育期間の繁殖記録、順調にいって1年1頭の出産、総数21頭はまず妥当な数でしょうか。それでも開園初期の野犬に襲われて、親仔が咬み殺されてしまうような悲しい事件がなければ、トラと5位の座を競り合ったかも知れませんネ。(昭和54年に全部放出してしまい、現在では、かわりにアキシスシカが展示されています。)

[第7位 ヌートリア 20頭(13頭)]
懐かしい名前が出てきました。「えと」にちなんで購入され、昭和46年12月より51年2月までの4年余りの飼育期間に、5回20頭の出産をしました。さすがにネズミの仲間、旺盛な繁殖力でした。

[第8位 クロクビタマリン 16頭(8頭)]
双子で年2回生む繁殖力が、8位ながらランキング入りしました。ちなみに同じキヌザルの仲間のワタボウシパンシェが次点で、比較的よく増えているマントヒヒ・ハイイロキツネザルが7頭で、17・18位であるように、霊長類は、常識的には2年に1度位のペースで、しかも1産1仔のため、ベスト10入りは群れで飼育しないかぎりなかなかむずかしいようです。

[第9位 ヒョウ 16頭(5頭)]
今は亡きヨッコ、昨年、老衰で死ぬまでの期間に16頭も出産していました。現在のクロヒョウの雄、人工哺育で育ったヒョウ子以外印象のうすいのは、やはり死亡率の高いせいでしょうか。出産してから数日後、仔の姿が全く見えなくなってしまったこともありました。猫族の習性は摩訶不思議です。

[第10位 ライオン 15頭(13頭)]
老ライオンばかりがやってきて、開園してからの数年間は、繁殖は夢でした。子供動物園でしばらく飼育されていたトーイが子供を生み出すと、今度は引き取り手がなく悲鳴・・・。産児制限をされながらの、10位入りはお見事というべきか。

[次点 ワタボウシパンシェ 15頭(9頭)]
出産総数は、ライオンと同数ですが、成功率が低いので次点としました。しかし、この小さな体で、よくもライオンと張り合ったものです。産児制限を受けぬ身、近々、ライオンを抜いて、ベスト10入りをすることでしょう。

以上が、ベスト10入りを果たした動物達です。20位までの動物達も、名前だけあげてみました。
だいたいこんなものだ、予想とそんなに違わなかったと思われたでしょうか、それとも、意外な動物が意外に産んでいると思われたでしょうか。
こうして、ベスト10を組んで、表面に出る動物達以外に、死産・流産に終わるか、出産しても間もなく死亡して、スポットライトの当てられぬ動物達もずいぶんいます。次号はそんな動物達の挿話を紹介しながら、個体別にみた出産ベスト10を組んでみたいと思います。
乞う!御期待
(松下憲行)

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